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国会からの検査要請事項に関する報告(平成27年) | 国会からの検査要請事項に関する報告 | 検査結果 | 会計検査院 Board of Audit of Japan

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全文

(1)

東京電力株式会社に係る原子力損害の賠償に関する国の支

援等の実施状況に関する会計検査の結果についての報告書

(要旨)

平 成 2 7 年 3 月

(2)

1 検査の背景及び実施状況

(1) 参議院からの検査要請の内容

東京電力株式会社に係る原子力損害の賠償に関する国の支援等の実施状況に関する

次の各事項である。

① 原子力損害の賠償に関する国の支援等の状況

② 原子力損害賠償支援機構による資金援助業務の実施状況等

③ 東京電力株式会社による原子力損害の賠償その他の特別事業計画の履行状況等

(2) 25年報告及び25年報告以降の動向

会計検査院は、上記の要請により平成25年次に実施した会計検査の結果について、

25年10月16日に、会計検査院長から参議院議長に対して報告した(以下、この報告を

「25年報告」という。)。

政府は、原子力災害からの福島の復興・再生を一層加速させるため、25年12月20日

に「原子力災害からの福島復興の加速に向けて」を閣議決定している(以下、この閣

議決定を「25年閣議決定」という。)。この中で、原子力災害から一日も早く福島を

再生させることは国の責務であるとして、福島の再生のために必要な全ての課題に対

して、国民の理解と協力を得ながら取り組んでいく姿勢が明らかにされた。そして、

25年閣議決定において明らかにされた国の方針や、東京電力株式会社(以下「東京電

力」という。)を取り巻く事業環境の変化を踏まえて、総合特別事業計画(以下「総

特」という。)の内容を大幅に見直した新・総合特別事業計画が策定された。あわせ

て、原子力損害賠償支援機構法(平成23年法律第94号。26年8月18日以降は原子力損害

賠償・廃炉等支援機構法。以下「機構法」という。)が改正され、原子力損害賠償支

援機構(26年8月18日以降は原子力損害賠償・廃炉等支援機構。以下「機構」とい

う。)に賠償支援業務に加えて廃炉等支援業務が追加された。

(3) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

ア 検査の観点及び着眼点

会計検査院は、25年報告において、除染に係る費用の見通しとその負担が不透明

であることや、柏崎刈羽原子力発電所(以下「柏崎刈羽原発」という。)が25年9

月末現在稼働していないなど、東京電力の業務運営が総特における見込みとは異な

(3)

を踏まえた上で、25年度以降に実施された支援等について引き続き検査を実施して、

検査の結果については取りまとめが出来次第報告することとした。

そこで、今回の検査では、正確性、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点か

ら、それぞれ次の着眼点により検査を実施した。

① 原子力損害の賠償に関する国の支援等はどのように実施されているか。特に、

国の支援等に係る財政負担等はどのような状況になっているか、財政上の措置以

外の国の支援等はどのような状況になっているか。

② 機構が行う東京電力への資金交付等の資金援助等の業務はどのように実施され

ているか。機構が東京電力等から納付を受ける負担金の水準はどのように設定さ

れているか、機構が引き受けた東京電力が発行した株式の処分を含めて、機構を

通じて東京電力に交付された資金の回収の見通しはどのようになっているか。機

構の決算はどのような状況になっているか。

③ 原子力損害の賠償に関して、要賠償額の見通しはどのようになっているか、東

京電力による賠償は適正かつ迅速に行われているか、除染に係る費用の負担はど

うなっているか。東京電力の事業運営に関して、経営の合理化のためのコスト削

減、資産売却等の方策や事業改革はどのように実施されているか、財務基盤の強

化は図られているか、特別事業計画の作成後の状況の変化に適切に対応している

か。廃炉・汚染水対策における国と東京電力の役割分担はどのようになっている

か、対策の適正かつ着実な推進が図られているか。東京電力の決算はどのような

状況になっているか。

イ 検査の対象及び方法

会計検査院は、検査に当たっては、内閣府、文部科学省、経済産業省及び機構に

よる原子力損害の賠償の支援並びに東京電力による特別事業計画の履行のうち、原

則として26年9月末までに実施された支援等を対象とした。

検査の実施に当たっては、計算証明規則(昭和27年会計検査院規則第3号)に基づ

き提出された計算証明書類、各機関から徴した関係資料、報告等により、専門家の

意見も踏まえつつ、在庁してこれらの分析等を行うとともに、内閣府、文部科学省、

経済産業省、環境省、機構及び東京電力において、関係書類を基に説明を受け、ま

た、東京電力については福島第一原子力発電所(以下「福島第一原発」という。)

(4)

2 検査の結果

(1) 原子力損害の賠償に関する国の支援等の状況

東京電力に係る原子力損害の賠償に関する国の支援は、原子力損害の賠償に関する

法律(昭和36年法律第147号。以下「原賠法」という。)の枠組みの下で行うこととさ

れており、国が原子力損害の賠償に関する支援等に係る財政上の負担等をした額は、

図表1のとおり、計4兆9002億余円となっている。

このほか、国は、福島第一原発の廃炉・汚染水対策に関して計1892億余円の財政措

置を講じている。

図表1 原子力損害の賠償に関する支援等に係る国の財政負担等の状況 (単位:百万円)

金 額 会 計

原子力損害賠償補償契約に基づく福島第一原子力発電所に係

1 る補償金 120,000 一般会計

原子力損害賠償補償契約に基づく福島第二原子力発電所に係

2 68,926 一般会計

る補償金

(交付国債の交付) (9,000,000) エネルギー対策特別会計

3 <うち東京電力への交付を決定した額> <5,301,439> 原子力損害賠償支援勘定

うち平成26年12月末までに国から機構に償還済みの額 4,533,700

原子力損害賠償支援資金のうち26年12月末までに利払いのた 一般会計→エネルギー対策特別会計

4 4,952

めに取り崩した額 原子力損害賠償支援勘定

一般会計→エネルギー対策特別会計

5 機構法第68条の規定に基づく機構への資金交付 35,000

電源開発促進勘定

原子力損害賠償紛争審査会及び原子力損害賠償紛争解決セン 23年度:一般会計

6 ターの運営等に係る経費 4,471 24年度:東日本大震災復興特別会計

25年度:東日本大震災復興特別会計

7 補償金の支払に先立つ審査、調査等に係る委託費用 70 一般会計

8 東京電力の経営・財務の調査に係る委託費用 508 一般会計

一般会計→エネルギー対策特別会計

9 機構への出資 7,000

原子力損害賠償支援勘定

一般会計からエネルギー対策特別会計原子力損害賠償支援勘

10 定への繰入れ 1,052 一般会計

11 仮払法に基づく仮払金の支払に係る委託費用 18 一般会計

12 仮払法に基づく原子力被害応急対策基金の設置費用 40,385 一般会計

23年度:一般会計→エネルギー対策

13 福島県民健康管理基金の設置費用 84,162 特別会計電源開発促進勘定

24年度:東日本大震災復興特別会計

計 4,900,249

(5)

図表2 国の機構に対する財政上の措置の状況

借換え・利払い 金融機関

国 貸付け1兆円

出資1兆円(24.7.31) 一般会計

政府保証限度額

繰入れ 繰入れ 繰入れ 繰入れ 4兆円

100億円 10億円 70億円 (350億円) (26年度予算総則) 機 東 原

(24.3.6) (23.11.10) (23. 8.17) (平成26年度 構 京 子

225億円 (24. 4. 6) 予算) 電 力

(26.4.4) 力 損

資 を

本 受

出資70億円(23.9.6) 金 出資23億円(23.9.6) 賠償の請求 け

140 た

エネルギー対策 億 者

特別会計 円

原 子 力 原子力損害賠償 交付国債9兆円 (交付決定額5兆3014億円)

損害賠償 支援勘定

支援資金 うち4兆5337億円を償還済み 資金交付4兆5337億円 賠償 4兆5656億円

資金交付350億円 エネルギー対策 (平成26年度予算)

特別会計 特別負担金 -円(23年度分)

電源開発促進 -円(24年度分)

勘定 500億円(25年度分)

電気料金 283億円(23年度分)

国庫納付 388億円(24年度分)

799億円(23年度分) 567億円(25年度分)

973億円(24年度分)

2097億円(25年度分) 一般負担金 815億円(23年度分)

国債整理基金特別会計 1008億円(24年度分)

1630億円(25年度分) 電気料金

531億円(23年度分) 子 消

利払い 借換え 619億円(24年度分) 力 費

62億円 (返済) 1062億円(25年度分) 事 者

引受け・ 者

貸付け 出資46億円(23.9.6)

4兆5822億円(純額)

金融機関 等

注(1) 各金額は、平成26年度予算又は26年12月末までの実績に基づくものである。

注(2) 東京電力から原子力損害を受けた者に対する「賠償4兆5656億円」には、福島第一原発に係る補償金1200億円を原資とした分が含まれている。

ア 国による財政上の措置等の状況

(ア) 原賠法に基づく措置の状況

国は、東京電力に対して、福島第一原発に係る原子力損害賠償補償契約による

補償金として1200億円、福島第二原子力発電所に係る同契約による補償金として

689億2666万余円を支払っている。

(イ) 国から機構に対する財政上の措置の状況

国は、機構に対して9兆円の国債を交付しており、機構の請求に応じて26年12月

末までに計4兆5337億円を償還し、機構を通じて東京電力に対して同額を交付して

いる。また、交付国債の償還のために借り入れるなどした借入金等は計4兆5822億

余円となっていて、これに係る支払利息は、今後、償還期限が到来するものも含

めて計106億2301万余円となっている。さらに、エネルギー対策特別会計電源開発

促進勘定の平成26年度予算において、機構法第68条の規定に基づく機構への資金

(6)

イ 国による財政上の措置以外の支援等の状況

(ア) 原子力損害賠償紛争審査会及びADRセンターによる支援の状況

原子力損害賠償紛争解決センター(以下「ADRセンター」という。)における

23年9月から26年9月末までの和解の仲介の申立てに係る取扱実績は、申立件数1

3,206件、処理件数10,408件となっていて、26年9月末現在で2,798件が未処理とな

っている。

(イ) 機構法附則の検討条項に係る進捗状況

機構法附則第6条第1項から第3項までの規定に基づく検討及び措置については、

25年閣議決定や機構法の改正等、検討結果に基づく措置が講じられている事項も

あるが、政府においてなお検討の途上にあり、その結果に基づく原賠法の改正等

の抜本的な見直しなどの必要な措置を講ずるまでには至っていない事項もある。

(2) 機構による資金援助業務の実施状況等

ア 機構及び東京電力による特別事業計画の作成等の状況

機構は、機構法の規定に基づき、東京電力と共同して、これまで数次にわたり交

付国債による資金交付の前提となる特別事業計画を作成又は変更し、主務大臣であ

る内閣総理大臣及び経済産業大臣の認定を受けている。そして、26年8月に変更の認

定を受けた新・総合特別事業計画(以下、変更の認定を受けた新・総合特別事業計

画を「第2次新・総特」といい、新・総合特別事業計画と第2次新・総特を総称して

「新・総特」という。)においては、要賠償額の見通しが5兆4214億3900万円となっ

たことを受けて、資金交付額は、福島第一原発に係る補償金1200億円を控除した5兆

3014億3900万円となった。

イ 資金援助業務の実施状況

(ア) 東京電力が発行する株式の引受け等の状況

機構は、東京電力が発行する株式を1兆円で引き受けている。機構が引き受けた

東京電力の種類株式を全て普通株式に転換して売却等する場合、機構が全ての売

却等までに得ることになる対価の額は平均売却価額に約33.3億株を乗じて得られ

る額となる。そして、除染費用相当分(約2.5兆円)を株式の売却益で回収するに

(7)

(イ) 交付国債の償還請求及び賠償資金の交付の状況

機構は、東京電力からの要望に応じて交付国債の償還請求を行い、償還された

分について東京電力に対して原子力損害の賠償に充てるための資金として交付し

ており、26年12月末までの交付額は、計4兆5337億円となっている。

ウ 機構への負担金の納付等

(ア) 機構への負担金の納付の状況

25年度分の一般負担金年度総額は1630億円であり、各原子力事業者は同額を26

年12月末までに機構に納付している。25年度分の特別負担金については、機構は、

26年3月20日の運営委員会で271億円と議決し、主務大臣はこれを認可した。その

後、東京電力の25年度決算に係る経常利益の大幅な上振れを受けて、機構の運営

委員会は26年4月21日に資金交付額を500億円に変更する議決をし、主務大臣はこ

れを認可した。そして、機構及び資源エネルギー庁は、特別負担金に係る認可の

事実のみを公表している。

しかし、特別負担金の多寡が国民負担に影響を及ぼすものであることなどに鑑

みると、機構は、各年度の額の算定に係る具体的な考え方を、東京電力の財務諸

表上の計数等、検討に際して考慮した諸要素を適宜用いるなどして、国民に対し

て十分に説明する必要がある。また、資源エネルギー庁は、機構が特別負担金の

額を主務省令で定める基準に従って定めたことについて国民に対して十分に説明

していくよう、内閣府と共に機構を監督していく必要がある。

(イ) 交付した資金の回収に係る試算

会計検査院において、国が機構を通じて東京電力に交付した資金が、今後、ど

のように実質的に回収されるかなどについて、機構が保有する東京電力の株式に

係る売却益を①3.5兆円、②2.5兆円、③1.5兆円とするなど一定の条件を仮定して

機械的に試算した。その結果、資金交付額が交付国債の額である9兆円になるとし

て、特別負担金の額を500億円とするなどした場合に9兆円を回収するのは、21年

後の平成47年度から30年後の平成56年度となった。この場合、回収を終えるまで

に国が負担することとなる支払利息は、約1032億円から約1264億円までとなり、

原子力損害賠償支援資金(以下「原賠資金」という。)への追加的な資金投入等

(8)

1兆5000億円 2兆5000億円

3兆5000億円

1兆0041億円 8643億円

7260億円

3兆2651億円 2兆8409億円

2兆4209億円

1兆7490億円 1兆5225億円

1兆2982億円

1兆4817億円 1兆2721億円

1兆0547億円

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

条件③ 条件② 条件①

▲ 1,000 ▲ 900 ▲ 800 ▲ 700 ▲ 600 ▲ 500 ▲ 400 ▲ 300 ▲ 200 ▲ 100 0 100 200 300 400億円

図表3 交付された資金の回収額のうち東京電力の負担(試算)

2兆3530億円(26.1%) 9兆円

(平成 47年度)

2兆7946億円(31.0%)

(51年度)

3兆2307億円(35.8%)

(56年度)

株式売却益 機構法第68条の規定 一般負担金 一般負担金(東京電力) 特別負担金 に基づく機構への資 (東京電力以外の

金交付 原子力事業者)

(注) 括弧書きの年度は、試算の結果、9兆円の回収が終了することになる年度である。

図表4 原賠資金の残高の推移(試算)

原賠資金の積み増し225億円

▲694

▲789

▲926

注(1) 残高のマイナスは、原賠資金への追加的な資金投入等が必要なことを示す。

注(2) 借入れなどに係る支払利息については、原賠資金のほか平成23年度に一般会計から繰り入れられた資金や余裕金等の運 用により生じた受取利息収入が充てられているため、原賠資金の残高(追加的な資金投入等を含む。)と支払利息額の総 額は一致しない。

エ 機構の決算の状況

機構が主務大臣に提出し承認を受けた23年度の財務諸表は運営委員会で議決され

た財務諸表を修正したものであり、修正した財務諸表については運営委員会の議決

を改めて経ていなかった。しかし、機構は、機構法で定める運営委員会の議決を改

めて経る必要があったと認められる。

条件①

条件②

(9)

(3) 東京電力による原子力損害の賠償その他の特別事業計画の履行状況等

ア 原子力損害の賠償の状況

要賠償額の見通しは、第2次新・総特において5兆4214億余円となり、23年4月から

26年12月までの東京電力の賠償金の支払額は、4兆5656億余円となっている。

23年度から26年度までの4か年度の本賠償金1件当たりの平均支払額をみると、

「個人」325万余円、「個人(自主的避難)」27万余円、「法人等」562万余円、

「団体」1億9441万余円となっている。

「個人」及び「法人等」に係る賠償金について、請求受付から支払までに2年以上

の期間を要した支払が見受けられたほか、「個人」に係る賠償金の支払について、

4件、計109万余円の重複が見受けられた。東京電力は、賠償金の支払について機構

のモニタリングを受けるとともに、従来、賠償金の適正な支払の確認に取り組んで

いるとしているが、引き続き適切な賠償を実施するための取組に努める必要がある。

イ 特別事業計画に基づく東京電力の事業運営の状況

(ア) 経営の合理化のための諸方策の実施状況

a コスト削減の状況

東京電力は、24年度から「10年間で3兆3650億円を超えるコスト削減を実現す

る」としており、機構は、これを支援しつつ、「その進捗をモニタリングする

体制」を執ることとしている。25年度のコスト削減額についてみると、目標額

7862億円に対して、東京電力が算定して公表している実績額は8188億円となっ

ている。コスト削減施策には修繕工事等の繰延べによるコスト削減が含まれて

いるが、繰延べが外的要因によると認められるものなど算定及び公表について

今後留意する必要のある事態が見受けられた。

b 設備投資計画の見直し

新・総特においては、25年度から34年度までの設備投資額は、総特における

投資規模6兆5700億円から4兆6800億円に減少した。東京電力は、25年度の投資

削減実績額は目標額を241億円上回る1554億円になったとしている。一方、設備

投資削減額を原資とする投資の再配分については、柏崎刈羽原発における工事

が繰延べとなったことなどにより、当初の計画額を大幅に下回る結果となった

(10)

c 資産売却等

総特においては、資産売却について、25年度までに「不動産、有価証券及び

子会社・関連会社7074億円の売却」を目標としており、実績額は8122億円とな

っていて、東京電力は目標を達成したとしている。これらの中には、売却に当

たり、東京電力が売却した子会社に一定期間継続して事務を委託することを約

束していて、コスト削減に資するかどうか引き続き注視する必要のある事例が

見受けられた。

d 希望退職による人員削減、組織フラット化等の人事改革

東京電力は、総特における25年度末までの人員削減の目標(連結で約7,400人、

単体で約3,600人)を達成したとしている。また、東京電力は、26年5月の希望

退職者の募集に1,100人を超える応募者があり、これによる26年度の人件費削減

額は85億円と見込まれるとしている。そして、新・総特においては、社内カン

パニー制及び管理会計の導入を踏まえて、26、27両年度に業務の集中化や見直

しを行うことなどにより、約1,700人分の業務量削減効果を見込む「組織フラッ

ト化」を実施するとされている。

e HDカンパニー制導入に向けた社内カンパニーの戦略実施状況

パワーグリッド・カンパニーにおいて、スマートメーターの設置に至るまで

の一時的対策として東京電力が実施した新料金プランの設定等に伴うメーター

の調達について、需要想定が過大であったため、大量の過剰在庫が発生してい

る事例が見受けられた。

(イ) 収支見通しの状況

a 収支の状況

新・総特に添付されている収支見通しと東京電力の25年度決算を比較すると、

経常利益は決算額が見通しを上回っているものの、原子力損害賠償費の追加的

発生等により税引前当期純利益は決算額が見通しを下回っている。

b 柏崎刈羽原発の状況と収支への影響

(a) 新規制基準に適合するための工事の進捗状況等

東京電力は、柏崎刈羽原発の再稼働のために、原子力発電所の規制に係る

規則等(新規制基準)に適合するよう各種の安全対策を進めている。新・総

(11)

とを前提としていることから、東京電力は他の号機に先行して6号機及び7号

機について対策工事を実施しているが、27年1月末現在で、いまだ工事の一部

が完了していない。

(b) 再稼働の遅延による収支への影響

25年度の原油価格及び為替レートを前提とした6号機及び7号機がいずれも

再稼働しなかった場合の営業費用への影響は、東京電力の想定を前提とすれ

ば1年間で2880億円から4320億円程度になる。

c 財政状態及びキャッシュ・フローの状況と特別負担金

東京電力は、「2014年度東京電力グループアクション・プラン」において、

社債市場への復帰を可能とする財務体質とするために、自己資本比率を28年度

末に16%程度とするなどの目標を設定している。

新・総特においては、26年度以降の特別負担金を500億円と仮置きして収支見

通しが作成されているが、28年度末に自己資本比率が16.0%になるように特別

負担金を毎期700億円とすると、現金及び現金同等物の期末残高は最も少なくな

る30年度で1755億円となる。

(ウ) 金融機関への協力要請等

新・総合特別事業計画における要請を受けて、金融機関は、①与信を維持し、

②一般担保による与信の総量は23年原発事故発生時における範囲を超えず、減少

するよう運用するとともに、③機構及び東京電力と協議した上で、26年4月以降、

原則として、返済期限が到来した借入金の借換えの際に短期の委託者向けローン

を選択することにより、私募債形式によらない融資を行っている。

ウ 1~4号機の廃炉に向けた取組等

(ア) 1~4号機の廃炉に向けた取組

福島第一原発の1号機から4号機まで(以下「1~4号機」という。)の廃炉作業

に要する期間は、「東京電力(株)福島第一原子力発電所1~4号機の廃止措置等

に向けた中長期ロードマップ」(以下「中長期ロードマップ」という。)によれ

ば、30年から40年という長期にわたるとされている。

東京電力は、中長期ロードマップ等に基づき廃炉作業を進めており、4号機につ

(12)

(イ) 汚染水問題への対策等

a 汚染水問題に関する方針等

汚染水処理は、技術的難易度が高く、汚染水処理設備等を構成する装置等の

中には、除染装置(契約額計321億余円)、蒸発濃縮装置(同計184億余円)、

地下貯水槽(同21億余円)及びフランジボルト締めタイプの中低濃度タンク

(同160億円)のように、短期間で運転や使用を停止した装置等もあった。

b 汚染源を「取り除く」ための対策

東京電力は、2号機及び3号機のタービン建屋とトレンチの接続部を凍結によ

って止水し、トレンチ内の汚染水を移送して水抜きした上で内部を充塡する工

法を計画し、実証試験により止水が成立することを確認した上で工事を実施し

たが、止水するまでには至らなかった。また、多核種除去設備による汚染水の

浄化を行っている。

c 汚染源に水を「近づけない」ための対策

東京電力は、26年5月に、地下水バイパスによる地下水のくみ上げに係る取組

を開始した。また、凍土方式の陸側遮水壁の構築については、経済産業省が汚

染水処理対策事業費補助金により凍土方式遮水壁大規模整備実証事業として実

施している。

d 汚染水を「漏らさない」ための対策

東京電力は、1~4号機の既設護岸の前面に海側遮水壁の設置と併せて地下水

管理を行うための設備の設置も進めている。また、汚染水等を貯蔵するタンク

の増設を進めている。

(ウ) 福島第一原発の廃炉・汚染水対策に係る東京電力の負担等

東京電力が負担する廃炉・汚染水対策費用のうち、毎年度経常的に発生する消

耗品等に計上される費用(以下「安定化維持費用」という。)は、電気料金の原

価を算定する基礎となる営業費に算入することが認められており、その支出額は、

24、25両年度で計543億余円となっている。廃炉・汚染水対策を進める上で必要と

なる研究開発費は、23年度から25年度までの計25億余円となっている。また、東

京電力は、26年3月時点で、安定化維持費用及び研究開発費を除いた1~4号機の廃

炉・汚染水対策に要する費用の総額を計9712億余円と見込んでいる。そして、22

(13)

(エ) 廃炉・汚染水対策に対する国の支援等

a 廃炉・汚染水対策に対する国の財政措置

国は、23年度以降、1~4号機の廃炉・汚染水対策に関する研究開発等、研究

施設の整備等及び実証事業に対して、計1892億余円の財政措置を講じている

(図表5参照)。

図表5 廃炉・汚染水対策に対する財政措置 (単位:百万円)

区分 会計名等 目 事業名等 平成 計

23年度 24年度 25年度 26年度

研 委 一般会計補正予 電力基盤高度 発電用原子炉 984 1,500 - - 2,484

究 託 算(23年度) 化等対策委託 等事故対応関

開 費 東日本大震災復 費 連技術基盤整

発 興特別会計(24 備委託費

等 年度)

エネルギー対策 軽水炉等改良 発電用原子炉 - - 4,500 - 4,500

特別会計(25年 技術確証試験 等廃炉・安全

度) 等委託費 技術基盤整備

委託費

補 一般会計補正予 電力基盤高度 発電用原子炉 995 500 - - 1,495

助 算(23年度) 化等対策事業 等事故対応関

金 東日本大震災復 費補助金 連技術開発費

興特別会計(24 補助金

年度)

エネルギー対策 原子力発電関 発電用原子炉 - - 4,177 - 4,177

特別会計(25年 連技術開発費 等廃炉・安全

度) 等補助金 技術開発費補

助金

基 一般会計補正予 産業技術実用 廃炉・汚染水 - - 21,494 19,850 41,344

金 算(25年度、26 化開発事業費 対策事業

年度) 補助金

研究施設 一般会計補正予 独立行政法人 放射性物質研 - 85,000 - - 85,000

の整備等 算(24年度) 日本原子力研 究拠点施設等

究開発機構出 整備事業 資金

一般会計補正予 産業技術実用 放射性物質研 - - - 663 663

算(26年度) 化開発事業費 究拠点施設等

補助金 運営事業

実証事業 一般会計予備費 産業技術実用 汚染水処理対 - - 46,953 2,596 49,550

(25年度)及び 化開発事業費 策事業 補正予算(25年 補助金

度、26年度)

計 1,979 87,000 77,124 23,111 189,215

(14)

b 研究開発等への財政支援

委託事業による研究開発等についての事業数及び委託費は、23年度から26年

度までの計18事業53億余円となっている。

補助事業による研究開発等についての事業数及び補助金額は、24年度から26

年度までの計13事業48億余円となっている。

廃炉・汚染水対策事業による研究開発等については、「特定非営利活動法人

地球と未来の環境基金」が、基金設置法人として選定され、経済産業省から廃

炉・汚染水対策事業費補助金214億余円の交付を受け、26年3月20日に廃炉・汚

染水対策基金を造成した。しかし、基金設置法人に原子力分野に関する専門知

識を有する者は在籍しておらず、そのような者を在籍させるなどしておく必要

がある。

また、基金補助事業の公募等の業務を実施する事務局法人に株式会社三菱総

合研究所が選定され、同基金による廃炉・汚染水対策に資する技術の開発等計

42事業が実施されている。このうち研究開発に関する17事業中15事業において、

基金補助事業者の公募に対する応募者が技術研究組合国際廃炉研究開発機構の

1者のみとなっていた。このように、基金補助事業者の選定において競争原理が

働きにくい状況にあることを踏まえた上で、事務局法人においては、事業費が

適正であるかを十分に確認する必要がある。

エ 東京電力の決算の状況

25年度決算における収支の状況をみると、営業収益が前年度比11.7%増の6兆449

8億余円となったことや、営業費用を4.3%増にとどめることができたことなどから、

432億余円の経常利益を計上している。また、特別損益が3561億余円の利益となり、

(15)

3 検査の結果に対する所見

東京電力に係る原子力損害の賠償に関する国の支援は、原賠法の枠組みの下で、国民

負担の極小化を図ることを基本として、機構が東京電力に対して出資したり、原子力損

害の賠償のための資金を交付したりすることなどにより、多額の財政資金を投じて実施

されている。

25年閣議決定においては、原子力災害から一日も早く福島を再生させることは国の責

務であるとして、福島の再生のために必要な全ての課題に対して、国民の理解と協力を

得ながら取り組んでいく姿勢が明らかにされ、除染・中間貯蔵施設費用等に関する具体

的な対応として、国と東京電力の役割分担が明確にされた。そして、25年閣議決定にお

いて明らかにされた国の方針や、東京電力を取り巻く事業環境の変化を踏まえて総特の

内容を大幅に見直した新・総特が策定され、東京電力は、「責任と競争」の両立を基本

に、賠償、廃炉、福島復興等の責務を全うしていくとともに、電力の安定供給を貫徹し

つつ、新たなエネルギーサービスの提供と企業価値の向上に取り組むことなどが示され

た。あわせて、機構法が改正され、機構に賠償支援業務に加えて廃炉等支援業務が追加

された。

新・総特における要賠償額の見通しは5兆4214億余円(第2次新・総特)となり、賠償

の進捗や対象期間の延長に伴い引き続き賠償見積額の増加が見込まれるほか、25年閣議

決定においては、除染費用と中間貯蔵施設費用がそれぞれ約2.5兆円、約1.1兆円と見込

まれている。国から機構に対しては、原子力損害の賠償に必要な資金を東京電力に交付

するために累計で9兆円の国債が交付されており、26年12月までに原子力損害を受けた者

に支払われた賠償金の額は4兆5656億余円となっている。

東京電力は、電気料金改定等による収入の増加やコスト削減の実施による費用の抑制

等により、25年度決算で機構から資金援助を受けるようになって以降初めて当期純利益

を計上するなど財務状況について一定の改善がなされ、同年度分に係る特別負担金500億

円を納付するに至った。一方、原子力発電所の停止に伴う燃料費の増大等の影響により、

機構に一般負担金を納付する他の原子力事業者の中には複数年にわたり経常収支が赤字

となっているものがあることや、運転期間が40年を超える原子炉の取扱いによっては、

25年度分の一般負担金年度総額1630億円と同程度の金額を今後も維持することができる

(16)

そして、このような状況の中で、25年閣議決定において、機構が保有する東京電力の

株式を売却し、それにより生ずる利益の国庫納付により除染費用相当分等の回収を図る

とされたことから、東京電力の株式をできる限り早期に、かつ、高い価格で売却するこ

とは、国民負担の極小化や、機構法の本来の仕組み、すなわち、原子力事業者から納付

される一般負担金により機構に積立てを行い、原子力事故が発生した後の資金援助の財

源にするという仕組みが早期に機能することに大きく貢献する。しかし、株式を高い価

格で売却できるようにするために、財務状況の更なる改善、内部留保の蓄積、キャッシ

ュ・フローの確保等により企業価値の向上に東京電力が取り組むことは当然としても、そ

の取組は決して容易ではなく、また、実際の売却価格は様々な要素により決まるもので、

高い価格での売却は確実なものではない。

したがって、上記のような点を踏まえた上で、今後、文部科学省は次の(1)アの点に、

経済産業省は次の(1)イの点にそれぞれ留意して原子力損害の賠償に関する支援等を実施

し、機構は次の(2)の点に留意して資金援助業務等を実施し、また、東京電力は次の(3)

の点に留意して原子力損害の賠償その他の特別事業計画を履行していく必要がある。

(1) 原子力損害の賠償に関する国の支援等の状況

ア 文部科学省において、

(ア) ADRセンターにおける和解の仲介の申立てに係る未処理件数が大幅に減少す

るには、なお時間を要すると考えられることから、処理の促進のために引き続き

ADRセンターの体制整備等に努める。

(イ) 原賠法の改正等の抜本的な見直しなどの必要な措置を講ずるまでには至ってい

ないことから、原子力損害の賠償に係る制度における国の責任の在り方について

検討を加えるなど機構法附則において求められている事項を早期に達成できるよ

う努める。

イ 経済産業省において、

(ア) 一般負担金年度総額や東京電力の特別負担金額の認可に当たっては、「国民負

担の極小化を図ることを基本とする」という考え方を踏まえて、国が機構を通じ

て交付した資金の確実な回収と東京電力の企業価値の向上の双方に十分に配慮す

る。また、機構が特別負担金の額を主務省令で定める基準に従って定めたことに

(17)

(イ) 廃炉・汚染水対策において、基金補助事業者の選定において競争原理が働きに

くい状況にある場合には、事務局法人に事業費が適正であるかどうかを十分に確

認させるようにする。

(2) 機構による資金援助業務の実施状況等

機構において、

ア 東京電力におけるコスト削減等の経営合理化や原子力損害の賠償の実施に関する

モニタリングを引き続き的確に実施するなどして、引き続き、東京電力による特別

事業計画の確実な履行を支援する。

イ 一般負担金年度総額や東京電力の特別負担金額の検討に当たっては、「国民負担

の極小化を図ることを基本とする」という考え方を踏まえて、国が機構を通じて交

付した資金の確実な回収と東京電力の企業価値の向上の双方に十分に配慮する。ま

た、特別負担金の額が東京電力に対して「経理的基礎を毀損しない範囲でできるだ

け高額の負担」を求めたものであることについて、各年度の額の算定に係る具体的

な考え方を、東京電力に係る財務諸表上の計数等、検討に際して考慮した諸要素を

適宜用いるなどして、国民に対して十分に説明する。

(3) 東京電力による原子力損害の賠償その他の特別事業計画の履行状況等

東京電力において、

ア 本賠償未請求者に対する働きかけを継続して、未精算状態を早期に解消する。賠

償金の支払の重複が生ずることのないよう、引き続き、審査体制の強化に取り組む。

イ 経営の合理化に向けて、実質的な効果のあるコスト削減により一層取り組むとと

もに、売却に至っていない資産の売却に引き続き取り組む。子会社の売却に当たっ

ては、一定期間の業務委託を約定した売却が、実質的なコスト削減に資するかどう

か確認する。

ウ 廃炉・汚染水対策において、実証試験と実際の工事の結果が異なった原因を明確

にし、今後の実証試験での条件設定等に活用する。

東京電力の企業価値の向上は、今後、28年度末に機構によって実施される「責任と競

争に関する経営評価」によって検証されることとなっている。また、23年度以降多額の

財政措置が講じられて実施されている廃炉・汚染水対策については、機構に廃炉等支援

業務が追加されており、機構の指導の下で、適切な事業の実施と確実な成果が求められ

(18)

会計検査院としては、26年度以降に実施された支援等について引き続き検査を実施し

て、検査の結果については、上記の28年度末に実施される「責任と競争に関する経営評

価」による検証や廃炉・汚染水対策の実施状況等を踏まえた上で取りまとめが出来次第

参照

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